寒冷凝集素症を知る 症状は?
寒冷凝集素症では、どんな症状がみられる?
寒冷凝集素症の主な症状としては、貧血による症状、赤血球の凝集による症状、その他の溶血による症状があります。
しかし症状は患者さんによってさまざまで、重症度もさまざまです。患者さんによって、骨髄の異常の程度、寒冷凝集素の性質や量、免疫系のバランスなどが違うためです。
なお、以下の症状があっても、必ずしも「寒冷凝集素症」と診断されるわけではありません。自己判断せず、必要に応じて医師または医療機関にご相談ください。
貧血による症状
貧血、つまり酸素を運ぶ赤血球(ヘモグロビン)が少なくなると、酸素不足による頭痛やめまい、疲れやすいといった症状がみられ、酸素不足を補うために呼吸や心拍を早めたりする(息切れや動悸)反応などが起こります。
赤血球の凝集による症状
赤血球が凝集すると、細かい血管内の血液の流れを妨げるため(末梢循環障害)、手指・足先・耳・鼻などの冷えやすい部分の先端チアノーゼや壊死(えし)、違和感、痛みなどがあらわれます。また、冷たい食べ物・飲み物を飲み込むときにも痛みや不快感がみられます。
溶血・その他による症状(貧血による症状以外)
破壊された赤血球から出てくる成分により、黄疸やヘモグロビン尿が認められることもあります。また、補体が活性化することによる疲労感や倦怠感がみられることもあります。疲労感や倦怠感は見過ごされがちですが、寒冷凝集素症の病態を評価するのに大切な症状の1つです。「いつもよりひどく疲れる」などと感じる場合は、遠慮せずに医師に相談しましょう。
監修:姫路赤十字病院 副院長 兼
血液・腫瘍内科 部長
平松 靖史 先生
寒冷凝集素症は、寒い季節(秋・冬)だけ注意すればよい?
寒冷凝集素症は、通年にわたって注意が必要な疾患です。
寒冷凝集素症の症状は、寒さ・冷たさにさらされたときに悪化するため、秋・冬などの寒い季節には特に気を付けなければなりませんが、暖かい季節でも、冷房や冷たい飲食物の影響下では、寒冷凝集素が赤血球にくっつきやすくなるため、症状が悪化することがあります。
血栓塞栓症(血栓症)とは?1)
血栓塞栓症(血栓症)とは、血のかたまり(血栓)で血管が突然つまる病気です。脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症など、どこの血管がつまるかによって症状や病名は変わりますが、ほとんど何の前触れもなく突然発症することが共通した特徴です。
「手足のまひやしびれ」「しゃべりにくい」「胸の痛み」「呼吸困難」「片方の足の急激な痛みや腫れ」などの症状がみられた場合は、すぐに医師や医療スタッフに相談しましょう。
寒冷凝集素症患者さんに発症する血栓塞栓症2)
寒冷凝集素症患者さんは、血栓塞栓症の発生率が高いことが報告されています。日本人の寒冷凝集素症患者さんのデータでは、動脈で血栓ができる血栓塞栓症(とくに心筋梗塞)が多く発症しています。
監修:姫路赤十字病院 副院長 兼
血液・腫瘍内科 部長
平松 靖史 先生
また、寒冷凝集素症患者さんの血栓塞栓症の発生リスクについては、季節によって差がなく、いずれの季節でも高いことが報告されています。
監修:姫路赤十字病院 副院長 兼
血液・腫瘍内科 部長
平松 靖史 先生
寒冷凝集素症患者さんの生存率
これまで、寒冷凝集素症は自然寿命を著しく短縮するとは考えにくいとする報告(2000年)3)がありましたが、最近の研究(2019年)4)において、寒冷凝集素症患者さんは対照群と比較して生存率が低いことが示されました。
監修:姫路赤十字病院 副院長 兼
血液・腫瘍内科 部長
平松 靖史 先生
1)日本血栓止血学会. 血栓症ガイドブック.(2024年5月2日閲覧)
2)Kamesaki T. et al.: Int J Hematol. 2020; 112: 307-315.
3)Sokol RJ. et al.: Clin Lab Haematol. 2000; 22: 337-344.
4)Bylsma LC. et al.: Blood Adv. 2019; 3: 2980-2985.
MAT-JP-2405394-1.0-08/2024
最終更新日:2024年8月26日