患者さんの声 「からふる」私のCAD*ストーリー Vol.2
*寒冷凝集素症
寒冷凝集素症であっても
普通に日常生活を送れる幸せ
ササキさん(女性、80代)
血液検査で貧血があっても
自覚症状はなかった
-体の異変に気づいてから診断までのことを教えてください。
私は若いころから仕事と子育て、地域の役回りなどでずっと忙しく、趣味もなかったのですが、60代後半に仕事を退職して、私の好きなコーラスなど、サークル活動や習い事をいくつか始めていたころのことです。コレステロール値が高かったため、その治療薬を飲み、かかりつけ医でときどき血液検査をしていたところ、赤血球数とヘモグロビン値が低くなってきていることに気づきました。ただ、当初は基準値内で自覚症状もまったくなかったため、そのまましばらく様子を見ていました。その後、数年前には膠原病が疑われ検査をしましたが、膠原病も原因ではないことがわかりました。原因不明のまま貧血が続いていたため、5年ほど前に血液内科へ紹介され、そこで自己免疫性溶血性貧血と診断されました。
-自己免疫性溶血性貧血の1つである寒冷凝集素症(CAD)と診断されたのはいつごろですか?
CADと診断されたのは、自己免疫性溶血性貧血と診断されてから2回目の受診時(8ヵ月ほど後の夏)でした。「夏になったら血液検査の結果がよいのですが、冬には悪くなります。寒いのがよくないのでしょうか?」と先生に聞いたところ、先生が「鋭い質問ですね」とおっしゃって、CADについて説明されたことを憶えています。私は看護師をしていたためCADの病名は知っていて、教科書で見たレイノー現象が印象に残っていたので、診断されたときは、自分がその病気になったことにとても驚きました。
CADとわかって、これまで悩まされていた手の冷たさなどの症状とつながり、納得がいきました。診断後の冬になるころには、手が青くチアノーゼになる、歩くと息切れがするなどの症状をはっきり自覚するようになっていました。
冷えで現れる症状。
しだいに活動を控えるようになっていった
-疲労感を自覚することはありますか?
診断前には先生から「疲れませんか?」と聞かれても「私は元気ですよ。疲れません」と答えていたくらい疲れは感じていませんでした。しかし、CADと診断されてから1~2年後になると、ヘモグロビン値が10g/dLを下回ることも増え、疲れや息切れを少しずつ感じるようになったのです。地域の卓球サークルに通っていましたが、運動をすると息が上がり、途中から卓球はできなくなりました。
-症状は、どのように現れていますか?
ビリルビン値が高いときには、黄疸が出ているようです。黄疸は白目を見るとわかるといいますが、私はそれにずっと気づくことができず、少し前に温泉に行った際に鏡を見て初めて気づきました。「こんなに黄色いのになぜ気づかなかったのか」と自分でも驚いたほどでした。
また、冬に冷えると、手が痛くなり、それは骨の痛みのようにも感じます。近ごろは足のほうが冷えるようになり、足の指や裏にしびれや痛みとも違う、感覚がなくなったような違和感、不快さを感じています。
今年になってから、冷たい風が吹く春の日の夕方に、大きな物を抱えて250mほどのゆるい坂を上って帰宅したときのことです。足先が冷たくなり、重くて寒くて一生懸命歩いたのですが、家に着くと気分が悪くなってしまいました。むかむかと悪心がするような、頭の調子もおかしいという感じでした。そのときは赤黒い尿も出ていました。CADと診断されてから、トイレで尿の色を気にするようになりましたが、足が冷えたり、強い寒さを感じたりした後には、たいてい赤黒いヘモグロビン尿が出るようです。
日ごろから冷えを避け、
冬の外出は完全防備で
-冷えに対する工夫や、
気をつけていることを教えていただけますか?
料理をするときはボウルにお湯をためておき、手が冷えたらすぐに手をつけて温めています。
とくに冬は、レタスのような野菜であっても、すべて38℃くらいのお湯で洗ってしまっています。大根などの根菜類を切るときには手が冷えやすいので、調理する数時間前には冷蔵庫から取り出しておくようにしています。また、炊事で冷たい物を触るときには、細かい作業がしにくいですが、厚手のゴム手袋を着用しています。
食べ物では、冷蔵庫で冷やしたポテトサラダを食べて喉のあたりに違和感が現れたことがありますし、アイスクリームや冷茶など、冷たい物は摂取しないようにしています。
厚手のゴム手袋
台所で冷たい物を触るときには、裏起毛のゴム手袋を着用します。
-外出時には、どのような対策をしていますか?
冬に外出するときは、最初から完全防備です。ニット帽で耳まで隠し厚い手袋をして、厚手の上着をしっかり着込んで行きます。夏でもスーパーの中は寒いので、上着と薄手の手袋を常に買い物袋に入れて出かけ、必ず防寒してからスーパーに入るようにしています。冬のちょっとした買い物は、夫がウォーキングがてら行ってくれるので、助けてもらっています。
左上:愛用のニット帽
冬の外出時には、耳まで覆える帽子で防寒しています。
右下:薄手の手袋
夏でも常に買い物袋に入れて出かけています。
いくつになっても、
家族との普通の毎日を過ごしていきたい
-診断されてから、ご家族はどのような様子でしたか?
いまは子供が独立して夫と2人暮らしですが、夫はとても元気で協力的なので助かっています。洗濯物を干すときは、私が室内でハンガーにかけ、靴下などをピンチでとめて準備すると、夫が外に干してくれます。茶碗洗いやお風呂掃除など、いつも積極的に何かやろうとしてくれますね。私たちはパソコンの操作があまりできないのですが、息子がインターネットで病気や最近の治療について調べたことを教えてくれます。息子たちは私を心配して、「できるだけ親孝行しなくては」と思ってくれているようです。
病名を知ったときや貧血が悪化していたときには、ぼんやりと今後のことを心配したこともありましたが、貧血が落ち着いているときは、日常生活を普通に送れていることがとても嬉しいです。
ご自身の経験をふまえて、ほかの患者さんや同じような症状の方にアドバイスなどはありますか?
冷え対策については、「ちょっとだけだから」と冷えることをしてしまわないように気をつけることでしょうか。冬にうっかり少し外に出てしまったり、玄関先でお客さんと立ち話をして冷たい風が入ってきたり、軽い気持ちで冷たい物を素手で触ってしまったり、短い時間でも冷えることがあるので、気をつけなくてはいけないですね。
私は仕事を辞めてから地域で習い事やサークルなどの活動を楽しんでいたのに、ほどなく病気になり、ちょうどコロナ禍で感染の心配もあったため、結局それらをやめてしまいました。冬にほぼ外出せず、家にいることが多くなり、年齢も影響して筋力が低下しがちでした。じっとしていないで、家の中でも歩いたり階段を昇降したり、意識して運動するようにしたほうがよいと思います。
(2023年5月現在)
※すべての寒冷凝集素症の患者さんが同様の経過をたどるわけではありません。
ご自身の症状で気になることや治療に関することは、主治医またはお近くの医療機関にご相談ください。
「からふる」では、実際の体験談や専門家との座談会などを通じて、さまざまなCAD患者さんの日常生活の工夫や気持ちの変化をご紹介し、CAD患者さんのよりよい日々の助けになるようなコンテンツをお届けしています。
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最終更新日:2023年10月31日